【Management Talk】「日本ブランドを日本メーカーが復活させることに大きな意味がある」期待集まる新生アイワブランドの船出

アイワ株式会社 三井知則

米国アカデミー賞公認短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は、2018年に迎える創立20周年に向けて、新企画「Management Talk」を立ち上げました。映画祭代表の別所哲也が、様々な企業の経営者に、その経営理念やブランドについてお話を伺う対談です。
第10回のゲストは、アイワ株式会社 代表取締役社長 三井知則氏。アイワ復活のニュースが大きな話題となるなか、新生アイワ率いる三井社長に、今後の展望や戦略、ブランドにかける熱い思いを語っていただきました。
 
写真①
 

アイワ株式会社

老舗ブランドであるアイワブランドを日本のものづくり企業、十和田オーディオ株式会社が復活。新生「アイワ株式会社」を2017年4月に設立し、企業ビジョン「人々の生活の中に心地よい時間、空間を提供する」を掲げ、オーディオ・ビジュアル製品の他、時間、空間を演出する様々な商品を2017年秋より企画・販売していく。
 


 
写真②
 

アイワブランドの持つ価値がスモールスタートを許さなかった

 
別所アイワブランド復活のニュースは日本中を駆け巡りましたね。反響はいかがですか?
 
三井正直なところ、ここまで大きな反響があるとは予想していませんでした。6月20日の日経新聞さんで報道された後、日々、様々なメディアから取材のご依頼をいただいています。また、ありがたいことに、個人の方からも、アイワ復活に関して喜びの声や、励ましの声、ご要望等が寄せられているんです。もともと、この事業をスタートしようとしたときは、スモールスタートでじわじわと復活させていこうと想定していたのですが、アイワというブランドの持つ価値がそれを許さなかったのだなと思います。
 
別所アイワ株式会社創立の経緯を改めてお伺いできればと思います。母体は秋田県に本社を置く十和田オーディオさんですよね。
 
三井私自身は、2013年に参入した新参者ですが、十和田オーディオは非常に歴史のある会社です。ラジオの組み立てをする工場として1961年に創業して以降、AVの隆盛とともに歩んできて半世紀以上。自社ブランドを持たず、ソニー様をはじめ様々なお客様の製品を作るEMS、製造サービスを生業としてきました。
 
別所他社ブランドの商品を受託生産する会社だったわけですね。
 
三井ええ。ただ、昨今の厳しい業界の状況もあって、新たな事業に打って出たいと模索していたんです。そのなかで、自社ブランドを展開しようという方向性になった。ここから企業としてもう一度飛躍するためにはブランドが必要だと。はじめは、「十和田」というブランドを立ち上げていこうかという話もありました。ご存知のとおり、世界的な漢字ブームもありますので。しかし、それでは、相当な時間とコストがかかってしまう。そうした議論を続けるなかで、アイワというブランドが、2008年から使用されていないという話が浮上したんです。それで、アイワの商標権を保有しておられたソニー様に打診したところ、前向きなお返事が得られたわけです。そこから本格的に交渉を進め、今年2月に譲渡契約を結び、正式に我々がアイワというブランドを使えるようになったという経緯です。
 
別所なるほど。
 
写真③
 
三井当初、十和田というバックグラウンドは公表しないつもりでいました。十和田という会社は、黒子のような存在ですから、あまり名前が表に出ては本業に影響が出てしまうのではないかという懸念があったのです。しかし、報道で十和田という社名が出た後、SNS等でコアなファンの方が「ソニーの十和田製造のラジオがいい」とおっしゃってくださるなど、アイワというブランドを譲受けたのが十和田だということに対して、反対意見というよりは賛成意見の方が多かった。そういった意味でも、50年以上黒子に徹してきた会社がアイワというブランドを引き継いでいくことは、受け入れていただけたのかなと思っています。
 

アイワブランドは日本の宝

 
別所黒子として積み上げた信頼感によって世の中から歓迎されたんでしょうね。新生アイワに十和田のDNAはどのくらい受け継がれるのでしょうか?
 
三井商品の品質管理については、長年にわたる製造経験がありますので、まずはそこで十和田のDNAが出てくるでしょう。また、十和田が中国やベトナム、日本で持つ工場で、アイワの製品を製造していきます。
 今回、アイワ株式会社は、協業という形で様々な企業の力を借りながらスタートしていきます。製造拠点は海外に置きますが、それ以外は全て日本のチームです。昨今、様々なブランドが外国企業の傘下に入るという現実があるなかで、アイワという日本のブランドを日本のメーカーが復活させることに一つ大きな意味があると我々は考えているんです。アイワブランドは日本の宝ですから。
 
別所おっしゃる通りだと思います。アイワ株式会社はどのような方針で展開していくのでしょうか?
 
三井我々は、アイワという「事業」を継承したわけではなくて、アイワという「ブランド」を受け継いだわけです。そこで、新生アイワとして新たな価値を提供していくつもりでスタートするにあたって、企業ビジョンを作りました。「人々の生活のなかに、心地よい時間、空間を提供する」。様々な技術が開発されて便利な機能を持つ商品が増えていますけど、お客様が本質的に求めているものが、商品やサービス自体よりも、それを使うことによって得られる満足感だということに変わりはないと思うんです。ものが溢れている世の中において、選ばれるブランドになるためには、やはりそういったことを大切にしていかなければならない。そこに向かって、我々はメーカーとして提供できるものを考えていきたいです。
 
別所スペックや機能だけを語る時代はもう終わっていますよね。
 
三井やはり大切なのは感性でしょう。技術は、すでにかなり成熟している。基本スペックは押さえたうえで、アイワの商品を買ったことで得られる価値を追求していかなければいけないと考えています。
 
写真④
 

ファーストステージは実店舗販売

 
別所具体的にはどのような商品戦略をとっていくのでしょう?
 
三井日本国内のマーケットはいま、高価なトップブランドと安価なノーブランドで二極化していて、その真ん中のマーケットが空洞化していると言われています。我々としては、その中間層の価格帯において、安心できるブランドとして商品を提供していきたい。おそらくそれが80年代、90年代のアイワの価値であったと思うんです。まずは、今年の11月から12月にかけて、最初の商品群を出していきます。ラジカセやレコードプレイヤーといったアナログを中心とした商品構成に4Kテレビを加え、世の中にアイワのブランドを送り出していきます。その後、さらなる展開を進めていきたいと目論んでいます。
 
別所もう間も無くですね。楽しみです。販売戦略については?★
 
三井まずは、日本国内での販売からスタートしていきますが、ファーストステージとしては、Eコマースはやりません。10年近く休眠していたブランドをご理解いただくためには、実際に見て、触って、聴いていただいたうえで判断していただくことが大事ですから。音や映像のこだわりは、ネットでは伝えられない部分が大きいでしょう。ですから、最初の流通は、実店舗販売を基本にしていきます。
 

日本で育ったアイワを日本から復活させる

 
別所それも一つのチャレンジですね。では、海外展開についてはどのようにお考えでしょうか? 僕は、90年代初頭にニューヨークへ行ったときに目にしたアイワの大きな広告が非常に記憶に残っています。
 
三井おっしゃる通り、アイワが日本のブランドであるということは海外でも広く認知されていますので、発売すればおそらく人気も出てくるでしょう。実際、アイワ復活の報道は海外にも発信されています。ただ、我々としては、まず、日本での復活、日本で育ったアイワを日本で復活させるというところからスタートしていきたい。その次の段階として海外展開に臨みたいと考えています。
 
別所ワクワクしてきますね! それでは、先ほどは企業ビジョンについてお話しいただきましたが、新生アイワのブランディングについて具体的にどのようにお考えなのか教えていただけますか?
 
三井まさに我々がもっとも考えているのは、ブランド価値をどう高めていくかということです。そのために、8月1日から小牟田啓博さんというデザインプロデューサーをチーフブランディングオフィサーとして招聘しました。長年、auの携帯電話機の商品デザインを監修してきた彼が、アイワにも強い興味を持ってくれたんです。彼とともに、アイワブランドの価値ある商品を作っていきたいと考えています。
 
写真⑤
 
別所私たちショートショートフィルムフェスティバルも、昨年からブランデッドショートという部門を立ち上げ、短編映画を使って企業の物語を発信していくという取り組みを行っています。いま、様々な企業がショートフィルムを活用した動画マーケティング、ブランディングに注力しはじめています。そういった試みについてはいかがお考えですか?
 
三井映画ということでいうと、先日、NHKの地方ニュースで当社をご紹介いただいた際、冒頭で「バック・トー・ザ・フューチャー」の映像を取り上げていただきました。主人公がアイワの製品を使っているんです。ロゴもはっきりと写っています。しかも、主人公が、メイドインジャパンは最高だ、と発言している。その影響は当時のアイワブランドにとって当然小さくなかったでしょう。
 
別所ハリウッドにも認められたブランドだったわけですね。僕たちが手がけているショートフィルムは、短くても長編映画に負けない魅力を持っています。そのスナック感、デザート感が新生アイワブランドと重なる部分があるといいなと思います。アイワの製品が、若い方も含めて、受け入れられていくお手伝いができればなと願っています。
 
三井なにかコラボレーションの可能性がありそうですね。
 
別所ぜひ今後ともよろしくお願いします。本日はありがとうございました。
 
 

(2017.8.16)

 


 
三井 知則(みついとものり)アイワ株式会社 代表取締役社長
1963年東京都生まれ。1986年中央大学理工学部卒業、同年ミツミ電機株式会社に入社。
2013年十和田エレクトロニクスに入社、2013年10月より中国現地法人東莞十和田電子有限公司董事総経理、2017年4月より現職。