【Management Talk】「感性や勘を磨いていかなければならない」アジア太平洋地域ナンバー1を目指す総合人材サービスグループ代表の見つめる未来

パーソルホールディングス株式会社 水田正道

米国アカデミー賞公認短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は、2018年に迎える創立20周年に向けて、新企画「Management Talk」を立ち上げました。映画祭代表の別所哲也が、様々な企業の経営者に、その経営理念やブランドについてお話を伺う対談です。
第11回のゲストは、パーソルホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO 水田正道氏。今年7月から社名を変更し、新たなブランディングを展開する同社CEOに、新ブランドに込めた思い、そして、「はたらいて、笑おう。」というメッセージに託した願いについて語っていただきました。
 
写真①
 

パーソルホールディングス株式会社

1973年のテンプスタッフ株式会社創業以来、人材派遣、人材紹介、アウトソーシング、再就職支援など総合人材サービスを展開。2008年にテンプホールディングス株式会社を設立。2017年7月よりパーソルホールディングス株式会社へ社名を変更。グループビジョン「人と組織の成長創造インフラへ」を掲げ、働く人と組織の成長を幅広く支援すべく、労働・雇用の課題に総合的に取り組んでいる。
 
写真②
 

正規、非正規といった垣根を無くさなければいけない

 
別所本日はよろしくお願いします。まずは、御社が今年7月に「テンプホールディングス株式会社」から「パーソルホールディングス株式会社」に社名を変更された経緯をお伺いできますでしょうか。
 
水田議論を開始したのは2014年頃のことでした。社名・ブランド名変更の理由は大きく二つありました。一つ目として、我々のグループは、人材派遣の「テンプスタッフ」、アルバイト求人情報サービスの「an(アン)」、転職サービスの「DODA(デューダ)」をはじめ、国内外90社以上の幅広い企業群で構成されているのですが、それぞれの社名が違ったものですからグループとして世の中から認知されていなかった。まずは、この課題をなんとかしなければいけなかったわけです。
 
別所M&Aによって巨大なグループになったときに、グループ全体を束ねるブランドが必要だった。
 
水田ええ。そして、もう一つは、以前の社名「テンプホールディングス」ですと、テンプ=派遣というイメージが強く、当社グループの提供価値とイメージが合致しないという状況がありました。そこで、労働・雇用の課題解決に総合的に取り組むという決意も込め、事業実体に合った名前に変更することにしたわけです。PERSOL(パーソル)というブランド名には、「働く人(PERSON)の成長を支援し、社会の課題を解決(SOLUTION)して輝く未来を目指したい」という思いを込めています。
 
別所派遣だけでなく、総合的な人材サービスを提供している御社の実情に合った名前をつけたわけですね。
 
水田ご存知の通り、いま、働き方には多様性が出てきています。我々としては、正規、非正規といった垣根を世の中から無くさなければいけないと考えている。それぞれの方がかかえる事情や制約に合わせた形でしっかりとお仕事をご紹介していくということが当グループの使命だと自覚しています。
 
別所子育てや介護しながら働く方もいらっしゃるでしょうし。
 
水田これから10年先の雇用市場を考えた場合、在宅勤務やダブルワークは当たり前になっているでしょう。定年制度だって廃止されているかもしれない。そのなかで、我々は、みなさまがやりがいある仕事に就き、成長していくことを支援していきたいという思いを持っています。
 

ネット社会において情報の量と質は大きな武器

 
別所7月以降、テレビやラジオ、交通広告など、いたるところで御社の社名を目に耳にしました。
 
水田今回、広告を大規模に出稿しましたので、認知度は上がりましたし、「パーソルとはどんな会社なのかな?」とたくさんの方に興味を持っていただけました。当初、私はもっとわかりやすく、「テンプグループがパーソルグループに変わりました」といったメッセージを発信した方がいいのかなとも考えていましたが、みなさまの声を聞きますと、広告を見て、そのままネットで検索して当社のことを知っていただけた方が多かったようです。
 
別所リ・ブランディングには非常に興味があります。どれだけ以前のブランドを見せるのか、見せないのか。そして、事業自体においても、それぞれの強み、弱みをどう補完し強化していくのか。難しい課題だと思います。
 
水田おっしゃる通りそこは重要です。当グループでは、たとえば、かつてインテリジェンス(現パーソルキャリア)は派遣事業も手がけていましたが、昨年のはじめに事務系派遣事業をテンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)に、今年のはじめにエンジニア派遣事業をテンプスタッフ・テクノロジー(現パーソルテクノロジースタッフ)に統合しました。それまでは、社内競合が多少あってもいいと考えていたんです。社内で勝てないんだったら世の中で勝てるわけがないだろと(笑)。だけど、それは成長マーケットだったから言える話で、マーケットが成熟してくると、そこで生まれるロスは無視できなくなってくるわけです。
 
別所グループ内で競争するのではなく、むしろ協調しながら。総合人材サービスもそういう成熟したフェーズに入っているわけですね。
 
写真③
 
水田ええ。それに、これからの時代を考えたときに、我々がもっとも意識しなければいけないのはテクノロジーの進化です。テクノロジーが、これからどのような変化を生むのかは誰にもわからないですが、大きな影響があるということ自体は間違いない。ですから、いまと同じビジネスモデルがこれからもずっと通用していくわけではないでしょう。そうした状況においては、グループで力を合わせていくことが重要だと考えています。
 
別所インターネットの登場によってビジネスを取り巻く環境も一気に変わりましたしね。
 
水田いまもっともインターネットの影響を受けている業態の一つが、手数料ビジネスです。それは結局、情報のやりとりが簡単になって、しかも、膨大な情報が溢れる時代になったから。ECの隆盛がいい例でしょう。そうした時代に、我々がこれから何をやっていかなければいけないか? 一つポイントになるのは、情報の量と質だと思います。
 
別所情報の量と質。
 
水田たとえば女性の事務職にフォーカスすると、メディア等で紹介される「働きたい会社上位五十社」がありますよね。その五十社全社がパーソル経由でなければ紹介を受けられないという仕組みを作ることができれば、どんなにインターネットが普及して、情報が簡単に得られるようになっても怖くないんです。なぜなら、情報の元を持っているから。水源に近い上流の情報をしっかりと押さえていることがもっとも重要で、下流に流れてしまった情報しか持っていなければネットには完全に負けてしまう。我々がこれまで築き上げたものを全て失う可能性だってある。それがいま一番の危機感を持っていることです。
 
別所情報が価値を持つ時代。しかもビッグデータを分析することでそこに付加価値がついてくる。情報を磨き上げるための仕組み作りにも取り組まれているのでしょうか?
 
水田われわれは、お客様や個人の皆様の情報を圧倒的な量と質で保有しておりますから、そこは大きな武器だと自負しています。これから、多様性のある働き方を実現していくにあたって、それをどう活用できるか。それがイノベーションの柱になってくると考えています。
 
写真④
 

動画によるブランディングには今後も注力していく

 
別所そして、データも当然重要ですが、感情や共感といった部分も、両極のようでいて非常に大切だと思います。
 
水田まさにおっしゃり通りです。データを使いこなすと同時に、感性や勘を磨いていかなければなりません。ロジカルシンキングの重要性も理解していますが、最後は感性ですよ。そして一生懸命逃げないで真摯に向き合っていれば、理屈ではなく見えてくるものがきっとある。色々な経営者とお話をするなかでも多くの方が同じようにおっしゃっています。そもそも私が三十年近く前、派遣業界に飛び込んだもの勘でした。新卒採用、終身雇用、年功序列が当たり前の時代において、派遣という働き方は今後間違いなく伸びるだろう、という。理屈よりも、最後は感性と勘の部分が大きいんです。
 
別所そんななか御社が発信しているメッセージは、「はたらいて、笑おう。」。まさに感性に訴える言葉ですね。
 
水田日本中の人が働いて笑っている世界が実現できれば、素晴らしいことでしょう? もちろん働いていると、苦しく、辛い、理不尽なことがたくさんあります。けれど、困難を乗り越えたとき、努力が身を結んだとき、人は成長します。そのときの心からの笑顔をいくつも生み出したい。我々のメッセージにはそうした願いを込めています。
 
別所そのアイコンとして登場するのが、世界的エンジニアのスティーブ・ウォズニアックと、86歳の現役モデル、カルメン・デロリフィチェのお二人。この人選については?
 


 

 
水田社内でも賛否は分かれ、日本のタレントを起用した方がいいのでは? という意見も出ました。ただ、我々は、あえてそういう方は避け、「その職業、仕事によって世界的な影響を与えてきたストーリーを、自らの言葉と表情で語ってくださる」人物を起用したいと考えたのです。ウォズには、先日、日本武道館で開催したグループの社員総会にもサプライズゲストとして登場いただき、私も直接お話しして、非常に共感しました。
 
別所お二人は、インタビュー動画でも非常に力強いメッセージを発信されていました。インターネット上における動画マーケティングについてはどのようにお考えでしょうか?
 
水田一番意識しているのはそこですね。「はたいて、笑おう。」=パーソルということを、みなさまにご理解いただけるような形で展開できるか。そこに焦点を絞っていかなければならない。また、当グループでは、現在約3万人の従業員が働いておりますが、インナーブランディングにおいても、動画は非常に重要なものだと捉えており、今後も注力していくべきだと考えています。
 
別所僕が主宰しているショートショートフィルムフェスティバルでも昨年から、企業のブランディング動画を特集するブランデッドショートという部門を立ち上げました。まさに、動画は21世紀の企業ブランディング、マーケティングにおいて不可欠なものになっていると思います。それでは最後に、御社の今後の展望についてお伺いできますでしょうか。海外展開にも注力していかれるのでしょうか?
 
写真⑤
 
水田海外展開については、いま、注力しているのはアジア太平洋地域です。まずは、APACナンバー1を目指したい。モノ・カネは国境を越えてこれだけ自由に動いているのに、人材は動いていないという現実があるので、我々が触媒となって、APACにおいて、人材が自由に行き交うような世界を作っていきたいです。その目標の実現のためには、各地域でナンバー1のブランドを確立することが必要です。現在、日本ではそこを競っていますし、オーストラリアにおいては、先日、オセアニアで業界ナンバー1であるプログラムド社の株式を取得を発表しました。シンガポールやマレーシアでも我々の推計ではトップクラスに位置しています。それ以外のAPAC各国においてもなるべく早くナンバー1の実績を残し、国境を越えた人材の流動化を実現していきたいと考えています。
 
別所ありがとうございました。

(2017.8.22)

 


 
水田正道 パーソルホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO
 
水田写真_s
1984 年(昭和59 年) 4月 株式会社リクルート入社
1988 年(昭和63年) 7月 テンプスタッフ株式会社(現 パーソルテンプスタッフ株式会社)入社
1995 年(平成7年) 6月 テンプスタッフ株式会社(現 パーソルテンプスタッフ株式会社) 取締役
2005 年(平成17年) 6月 テンプスタッフ株式会社(現 パーソルテンプスタッフ株式会社) 常務取締役
2008 年(平成20年) 10月 テンプホールディングス株式会社(現 パーソルホールディングス株式会社)常務取締役
2010 年(平成22年) 6月 テンプホールディングス株式会社(現 パーソルホールディングス株式会社)取締役副社長
 テンプスタッフ株式会社(現 パーソルテンプスタッフ株式会社) 取締役副社長
2012 年(平成24年) 6月 テンプホールディングス株式会社(現 パーソルホールディングス株式会社)代表取締役副社長
 テンプスタッフ株式会社(現 パーソルテンプスタッフ株式会社) 代表取締役副社長
 
2013 年(平成25年) 6月 テンプホールディングス株式会社(現 パーソルホールディングス株式会社)代表取締役社長
 テンプスタッフ株式会社(現 パーソルテンプスタッフ株式会社) 代表取締役社長
2015 年(平成27 年) 3 月 パナソニック エクセルスタッフ株式会社 取締役
 パナソニック エクセルプロダクツ株式会社 取締役
2016 年(平成28 年) 6 月 テンプホールディングス株式会社(現 パーソルホールディングス株式会社)代表取締役
 社長 CEO(現任)