【Management Talk】「変化を恐れず、時代に合わせて進化していく」60周年を迎えた老舗ベビー用品メーカー社長が語るショートフィルムの価値

コンビ株式会社 五嶋啓伸

米国アカデミー賞公認短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は、2018年に迎える創立20周年に向けて、新企画「Management Talk」を立ち上げました。映画祭代表の別所哲也が、様々な企業の経営者に、その経営理念やブランドについてお話を伺う対談です。
第12回のゲストは、コンビ株式会社 代表取締役社長 五嶋啓伸氏。今年60周年を迎えた老舗ベビー用品メーカーがコミュニケーションの中心に据えたのは、ショートフィルムでした。ショートフィルムを選んだ理由、そして、「赤ちゃんを育てることが、楽しく幸せだと思える社会をつくる」というブランドビジョンに込めた思いについて語っていただきました。
 
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コンビ株式会社

1957年12月設立で今年創業60周年を迎えるベビー用品の総合メーカー。「お母さん(育児に係るすべての人)と赤ちゃんのコンビを応援する」企業として、今までにない製品・サービスを世に出し、育児環境の向上に努めています。
 
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転職して自由度の高さに驚かされた

 
別所本日はよろしくお願いします。まずは最初に、五嶋社長がコンビさんに入社されたきっかけからお伺いできますでしょうか?
 
五嶋実は、もともとは役者になりたかったんです。だから、別所さんが羨ましくてしょうがない(笑)。大学時代には、市民サークルで演劇に励みながら俳優を目指していました。けれど、女房と出会い、大学3年生のときに婚約したことが転換点になった。所帯を持たなければいけませんから、俳優の道は諦め、大学を卒業して前職の会社に就職したんです。一社目はある大企業で、社会人としての基礎を徹底的に叩き込まれました。非常に大事な経験でしたからとても感謝していますが、一方で、一字一句ルールが決まっていたため、面白みが少ないと感じてしまう部分もあったわけです。
 
別所奥様との出会いをきっかけに就職を決めた。その後、転職されたんですよね。きっかけは?
 
五嶋29歳のときに父親が亡くなり、改めて人生を見つめ直した結果、仕事を変えようと決意しました。それで、コンビに転職したのですが、その自由度の高さ、風通しの良さには驚かされました。性別や年齢による区別もなければ、学閥もない。たとえば、私は、入社してから一度も出身大学を聞かれたことがありません。しかも、25年前の時点で、上司を役職で呼ばずに“さん”付けする運動や、「ゴジラの日」と銘打って五時には帰りましょうという取り組みがあった。カジュアルフライデーも当時から実施していて、金曜日はポロシャツに綿パンでした。
 
別所今でこそ働き方改革と言われていますけど、先進的な試みを時代に先駆けて実行されていた会社だったわけですね。
 
五嶋ええ。また、私が入社2年目で初めて企画を立案し、上申したときには、中途入社の新米だったにも関わらず予算化されて実行できた。大変やりがいのある会社だと感じました。先人が作られた縁ある人々を大切にする制度や思いは現在でも受け継いでいます。
 
別所素晴らしいですね。
 
五嶋加えて、当社で特徴的なのは、女性社員の活躍です。採用活動においても、女性から非常に多くのご応募をいただけるので、いかに彼女たちの力を活用して会社を発展させていけるか、大きく期待している部分です。いま、新入社員の男女比は4:1で女性が多いという比率です。
 
別所それもすごい。そんな御社が掲げるブランドビジョンは、「赤ちゃんを育てることが、楽しく幸せだと思える社会をつくる」ということですが、そこに込めた思いをお伺いできますでしょうか。
 
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取扱説明書も動画に直結する時代

 
五嶋当社のブランドイメージを調査すると、「安心・安全」という結果が多く出ます。だけど、それはもはや、ブランドの優位点というよりはベースになっている。私たちは、そのうえで、子育てが幸せだと思える社会を創造する企業でありたいと考えています。子育てを楽しむためには、育てる側の心身のゆとりが必要です。特に初めての出産を控えている人は、不安で一杯でしょう。私たちは、そのゆとりを生み出すために、赤ちゃんや子育てをする人の視点に立ったもう一つの手となるような商品・サービスを展開して、お客様のお手伝いをしていく。そういう思いをブランドビジョンに込めています。
 
別所今年で60周年を迎える御社は、スペシャルサイト「Ikuji no Honto」で30秒前後のショートフィルムを使って、育児における様々なシーンを紹介されていますよね。僕は、ショートショート フィルムフェスティバルという映画祭を主宰しておりまして、昨年から企業のブランディングムービーを特集する「ブランデッドショート」という部門も作りましたので、非常に注目しています。
 
五嶋まず、今のお客様を分析すると、取扱説明書を文章やイラストではもはや読んでいただけなくなっていて、動画に直結しています。しかも、スマホの普及によって、知りたい瞬間にその場ですぐに見るという環境がすごく増えてきている。つまり、瞬間瞬間が非常に大事になってきているわけです。まして、不安定な体調が続く妊産婦さんのことを考えれば、短時間でご理解いただけるわかりやすい動画を作ることはとても大切でしょう。
 
別所まさにおっしゃる通りだと思います。
 
五嶋また、マーケティングにおいても動画は大きな役割を果たします。お客様が商品の購入を決定するタイミングは通常、3つあると言われています。1つ目は、売り場で商品を見たときのファーストインプレッション。つまり、一目惚れです。次に、売り場で実際に商品を触ったり試していただいて決めていただくというのが2つ目。そのあとに、売り場では決断してもらえなかったんだけど、なにか後ろ髪を引かれるような印象が残って、後日改めて購入していただくという3つ目のミーティングポイントです。3つ目のタイミングにおいて、動画が存在することは極めて重要です。改めて動画で商品をご覧いただくことでイメージをさらに膨らませていただける。
 
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別所ええ。
 
五嶋同時に、1つ目のミーティングポイントの前、来店前に動画を見ていただくことも大きなポイントになってくるでしょう。動画のイメージを持って来店していただければ、より私たちの商品を選んでいただきやすくなる。つまり、私たちは、当社の商品の魅力や扱い易さを短時間で簡単に知っていただき、さらにもう一歩踏み込んでいただくきっかけとして、ショートムービーを非常に重要視しているんです。
 

ショートムービーは一秒一秒の伝わる感度が高い

 
別所「Ikuji no Honto」の動画では、御社の商品の機能を説明する役割に加えて、まさにその「もう一歩踏み込んでもらうきっかけ」として、感情も動かされます。
 
五嶋私自身は特に、「洗濯って、幸せ」という動画が心に響いたのですが、出産を控えて不安や心配をかかえたお母さんやご家族に、赤ちゃんとの生活にはこんな素敵なシーンがたくさん待っているんだよと伝えることで、少しでもその不安を軽減できればと願っています。そうしたメッセージを発信することが私たちの使命だと思っています。
 

 
別所人それぞれが持っている物語を分かち合っていくことで勇気付けられたり、楽になったり、救われたりしますよね。そうしたメッセージを発信していくことが、結果的にお客さんから選ばれる企業になることにもつながる。
 
五嶋やはり、ものごとには理由が必要です。お客様にとっては私たちの商品を使っていただく理由が、当社にとっては商品を提供する理由が。両者が重なり合うことが理想的ですから、それをいかにショートムービーで伝えていくのかが非常に重要になってきます。現在、「Ikuji no Honto」サイトでは、15の動画コンテンツを発信していますが、まだまだ言い尽くせていない理由がたくさんある。今後、それをもっと増やしていくつもりです。
 
別所実際にショートムービーを作っていくなかで、五嶋社長が特に大事だと感じたことはありましたか?
 
五嶋当社が製作したのは30秒前後の動画が多いのですが、やはり瞬間の大切さを非常に強く感じました。一秒一秒の積み重ねが30秒程になり、一つの物語ができていくわけですから。たとえば、別所さんもよくご存知のように、舞台で、芝居の途中に役者がちょっと気を抜いた瞬間って、観客にはすぐにわかってしまいますよね。それは、長い演劇よりも短いもののほうがより顕著になると思います。
 
別所よくわかります。
 
五嶋映像も同様で、長編よりもショートムービーの方が、一秒一秒の伝わる感度が高い。そういう部分も含めて、私たちが今後研究していかなければならないことはたくさんあります。まだまだわからないことだらけです。逆に、別所さんから色々と教えていただいて、何か一緒にできたらなと思っています。
別所:それはぜひよろしくお願いします。御社の持つ物語をショートフィルム化したり、その先の展開として、リアルイベントで親子一緒に観られる上映会を企画したり。色々な展開ができそうですね。
 
五嶋現在公開しているコンテンツにはない物語をお客様から募集して映像化したりもできるでしょうし、お客様がショートムービーを観にきていただく機会をご用意して、交流の場を作ったり。SNSでその場にいない方も参加できる仕組みを作ることだって可能ですよね。ぜひ実現したいです。
 
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常に新しい試みに挑戦していきたい

 
別所本日のご縁から色々と繋がっていけたら嬉しいです。では、最後に、御社が今後、70周年、80周年、100周年を見据えてどのような経営ビジョンをお持ちなのか教えていただけますでしょうか。
 
五嶋私たちはよく、「少子化で大変でしょう?」と質問されるんですけど、少子化の流れは1980年代から始まっていることなので、当然、念頭に置いた経営をしているわけです。また、少子化のなかでも、1人のお子様にかける投資は増加しているという状況もあります。ですから、私たちが提供する商品に価値があれば、選んでいただける。当社の使命は、価値あるものをお客様にお届けし続けることだと信じています。
また、シナジー効果が活かせる分野も数多くありますから、まだまだ新しいことにも挑戦できると考えています。具体的には申し上げられない部分もあるのですが、たとえば、ベビーカーの機能を活かしたペット事業はすでにスタートしています。
 
別所ペットカートを。なるほど。
 
五嶋ペットもファミリーの一員だという考え方で始まった事業です。そういう意味でも、事業の卵はまだまだたくさんありますから、どんどん孵化させていきたい。当社にとって、日本という市場環境のなかで60年営業させていただいているという歴史は非常に大きな財産で、新規参入してきている海外メーカー等と比べて圧倒的な強さを持っていると自負しています。ただ、そうした老舗としての強みはベースに持ちつつ、常に新しい試みに挑戦していきたい。企業としても個人としても、常に変化を恐れず、時代に合わせて進化していくことが大切だと考えています。
 
別所ありがとうございました。

(2017.8.24)

 


 
五嶋_s
コンビ株式会社代表取締役社長 五嶋啓伸
静岡県出身。1992年コンビ株式会社入社。2011年より取締役常務執行役員ベビー事業本部長、コンビネクスト株式会社代表取締役社長に就任。2014年4月より現職。