ブランデッドムービーの最前線~企業・商品の思いを伝える動画マーケティング~ Vol.1

企業がブランディングのために制作するブランデッドムービー。「生活者にとっての魅力や価値」があると同時に、「企業側のブランドメッセージや想い」を表現する新しい手法として注目されています。SSFF & ASIAはこの動きにいち早く注目し、2016年に「Branded Shorts」を設立しました。SSFF & ASIA 2017大阪の一環として行われた今回のイベントではBranded Shortsノミネート作品を上映するとともに、SSFF & ASIA代表・別所哲也をホストに、(株)電通クリエーティブディレクター中尾孝年さん、読売テレビ放送(株)編成企画部長西田二郎さん、を迎えお話しいただきました。
 


 

第1部 企業の思いを伝えるには

 
別所僕はショートフィルムの魅力を伝えるために国際映画祭を19年間続けてきたのですが、21世紀の映像のなかで、コマーシャルでもないし、映画でもないブランデッドショートという世界が広がってきました。20世紀の100年間でつくった映像の世界が21世紀にどんな変化をするのか、テレビと広告の世界がこの先どう変わっていくのか、今日はみなさんと考えていけたらいいなと思います。
 

「機能」を買う時代から「理念」を買う時代に

 

 
別所スペックや結果をトリセツ的に映像で伝える方法もあるとは思うのですが、、観た後、気持ちがどれだけ動かされるか、が重要だと思います。例えば、この早稲田アカデミーの作品で言えば、ターゲットである母親に対し、子供に夢を追いかけてほしい、その先に大学があったり就職がある。この塾だったら自分の子供に夢を追いかけさせてみてもいいかなという、イメージ戦略として成功しているのではないかと。
 
中尾今、消費者の動きが変わってきていますよね。「機能」を買う時代から「理念」を買う時代になってきているのではないでしょうか。早稲田アカデミーも、何人合格という機能にお金をだすのではなく、なぜ子供に勉強を教えるのか、子ども達の無限の可能性を叶えるために教育という形で貢献したい、という理念への共感を生み出したのだと思います。それを伝えるのがブランデッドムービーなのでは。
 
西田スペックは調べたい人が調べる。スペックではないものを表現する場所としてブランデッドムービーが違うひとつのメディアになっているのかなと思うんです。
 
中尾クリエイティブの視点から言うと、何を伝えるかという所から一緒になって考えているんだと思うんですよね、もしブランデッドムービー作るんなら。オリエンテーションなどでデータやスペックなどを一旦飲み込んで、「何を伝えよう」、そこから一緒になってクリエイトする。実は「何を伝えるか」ということに対しいいものが見つかれば、作品も自然といい作品になるはず。
 
西田「作らされていない感」が伝わってくるんですよね、言葉がどうというよりも。一場面一場面に愛が散りばめてあって、すると気持ちが震える。TVもただ流せば伝わる時代ではなく、いかに気持ちをもって伝えていくか、に変化している。元々熱意を持って伝えると言うのは、当たり前のことなんです。もう一度その原点に立ち返る時なのでは。ブランデッドムービーがテレビの在り様に刺激を与えてくれている。
 

 
西田自分を自虐的な存在として認めて、そこから何ができるかが重要ですね。まず一回自分たちの弱みを開示した上で、好きになってくださいと。静岡新聞、SBS、やりよるな、と思いますもんね。
 
中尾今テレビの人は誰もが口をそろえて「変わります」「変わらなきゃ」と言うけど、本気な人は自分がダメな事を認めて改変するもの。それをエンターテイメントに包んでいる。ホンマに変わる気があるっていう伝わる方法として成功してますよね。
 

「愛情」は「スペック」を逆転できる

 
中尾サノヤス造船さんのリクルート用ブランデッドムービーは、「何を伝えるか」から一緒に考える事ができた仕事。希望者ゼロからのスタートだったんですよ。学生が働き先として求めるのは、自由で楽しい職場。岡山にある造船所に就職してくれる男子を集める広告なので、まずは彼らと同じ言葉で喋ろうと。会社側も生き生きと面白いCMをする会社は面白いと理解してくれて。コスパもいいです、歌うたってるん僕やし(笑)
 
別所少子高齢化の中、企業の皆さんは採用を深刻に考えている。いいものを作っているのに就職希望者が来てくれない、認知してもらいたいのにCMが打てない。ソーシャルメディアやネット上でアイデア勝負ができる。そういった動画マーケティングが大どんでん返しをしてくれるツールになっている。
 
中尾この作品は岡山のローカルニュース内で週一回だけ放送した。茶化しじゃなくオフィシャルとしてやっている後ろ盾が必要だったんで、一回だけでいいから流そうと。しかもギャップがあったほうがいいから、一番真面目な夕方のニュースを見ていたらあれが流れてきた、という。で、「今へんなものを見たような気がするんですが」というツイートが書かれて(笑)
 
西田公共の電波で流れるというのは信用の担保になるので、中尾さんの使い方は素晴らしいなと思います。そして、逆転できるのは動画しかないのでは?と思わせるくらい、動画のパワーってあるのかもしれませんね。
 
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別所実際アクセス数や応募が増えたんですよね。
 
中尾そうですね。スペックだけでは絶対勝てない勝負には、「愛情」で逆転できると思っている。例えば、福利厚生や企業ランキングなどでは到底歯も立たない勝負でも、「こんな作品作るなんておもしろい会社やな、好きやな」と思われたら、それは成功だと思う。
 
別所KPIとか、効果測定をどうするかという話は必ずでてくるじゃないですか。テレビも視聴率や、映画でも興行収入はとか、映画祭で賞とったとか・・・評価をどう置くかというのも動画マーケティングでは気になるところですよね。
 
中尾いま評価基準がただ視聴回数になっているのがよくないなと思って、単純に接触回数を図るのが目的ではなく、どれだけ愛してもらえるかが重要になってくるから機械的な計測はしにくい。もちろん話題されるというメリットもあるが、それと同じぐらいどれだけ愛されたか、という評価軸も必要なのでは。
 
別所確かに1000人の知り合いがいるより10人の親友、というのが大事だと思う。ブランデッドムービーはひとつのサービス、商品開発だけでなく、周年事業や創業者の想いとか、一方通行ではない、企業の思いを伝える場所なのではないか。
 


 
第2部「商品に込めた思いを伝えるには」はこちらからご覧いただけます。