アジア最大級の国際短編映画祭で最高峰に輝いたブランデッドムービー~審査員が人の心を動かす未来のコンテンツを分析~ Vol.1

広告と映画のハイブリッドとして価値を高めつつある短編映像作品・ショートフィルム。
2018年6月13日、アジア最大級の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジアは、ブランディングを目的として作られた350作品以上のショートフィルム(ブランデッドムービー)から、最も優れたブランデッドムービーを「Branded Shorts of the Year」として表彰しました。インターナショナルカテゴリー・ナショナルカテゴリーそれぞれの受賞作品について、審査員によるトークセッションも開催。消費者に心に届くブランデッドムービーの特徴とは。
 
【BRANDED SHORTS 2018 審査員】
審査員長 吉田 大八(映画監督/CMディレクター)
小山薫堂(放送作家/脚本家)
椎木里佳(株式会社AMF代表取締役社長)
高崎卓馬((株)電通 エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)
高野文隆((株)アサツー ディ・ケイ クリエイティブ・ディレクター/コミュニケーション・アーキテクト)
長谷部守彦((株)博報堂 エグゼクティブクリエイティブディレクター)
森本千絵(コミュニケーションディレクター/アートディレクター)
柳沢翔(映像監督)
山戸結希(映画監督)
 
 


 

■感情を揺さぶるストーリーで視聴者の心を掴む

 
長谷部:インターナショナルカテゴリーの受賞作品『Three Minutes』は脚本が素晴らしかったです。設定にコントラストがあるんですね。中国人にとって春節は家族と過ごす大切な時なのに、働いている母親は子どもといっしょに過ごせず、子どもは母親の罪のない嘘を信じ続けている。ずっと会いたいと願っているのに、親子が会える時間はたった3分。その限られた時間でどんな言葉を交わすのかと思ったら「九九を覚えた」という日常的な報告で、どれだけ親子が会えていなかったかが伝わってきます。作品の土台となる脚本のコントラストが、感情を揺さぶる黄金比で作られていました。
 
柳沢:ショートフィルムは物語の筋でどれだけ感動できるかが大事だと思いますね。『Three Minutes』はグッとくる引きの強いシチュエーションが素敵でした。限られたわずかな時間で親子が再会するシーンからは強い熱量が感じられます。どのカットにもエネルギーがありました。
 
吉田:私が好きな作品は『Tomorrow’s News』ですね。実際に起こった銃乱射事件の1日前に遡って、犠牲になった方や被害に遭った方にインタビューしていくという全く新しい手法で描かれた作品です。実際に起きた事件のニュースを“明日のニュース”として伝えるというもの。アイデアを緻密に構築したというよりは、アイデアをアイデアのまま視聴者に見せて、最後にハッさせて終わる構成が見事だと感じます。インパクトの余韻を引きずる作品ですね。
 
山戸:本当にアイデアフルで、『Tomorrow’s News』の監督にお会いしたいと思いました。このテーマを表現するためにはこのアイデアでなければならないという必然性を感じます。
 

■従来のルールに縛られないブランデッドムービーの可能性

 
長谷部:インターナショナルカテゴリーの審査は、『Three Minutes』と『Tomorrow’s News』の接戦でした。『Three Minutes』はエモーショナルで王道の“家族”がテーマで、映画のように緻密に作り上げたストーリーなのに対し、『Tomorrow’s News』は事実ベースのストーリー。ブランデッドムービーの真価は「どれだけ観客の心を動かしたか」にあるので、手法は関係ないんですよね。全く違うカテゴリーの作品同士がぶつかり合うことが印象的でした。
 
高崎:ブランデッドムービーにはカテゴリーの規定もルールもありませんから、作品としてのショートフィルムから広告的なアプローチをした動画まで参入できます。テレビCMを主として活動していると、メディア自体の力が弱くなっているのを日々感じるので「今後どうしたらいいだろう」とよく考えるのですが、ブランデッドムービーには新しい可能性を感じるんですよね。既存のメディアに縛られない動画を作り出せる場所ですから。ただひとつ注意したいのが、ショートフォルムとブランデッドムービーは違うということ。ショートフィルムの制作スキルだけでは商用ムービーを作れません。余韻を作れるショートフィルムの制作スキルと、テレビCMの制作スキルが融合した時に、初めてブランデッドムービーが誕生します。
 
柳沢:テレビCMの監督としてクライアントと話していると「CMでどれくらいの効果が見込めるのか」「CMで消費者とコミュニケーションしようとしても、今はYouTubeがあるからそれほど意味はないのではないか」といった疑問もよく浮上します。今高崎さんがおっしゃったように、ショートフィルムにおける映画の要素を取り込むことで、広告が進化するチャンスになるかもしれませんね。映画は「人を動かす文法」を持った歴史あるコンテンツでもあります。商品の魅力をきちんと伝えつつ、映画のような愛も込める。映画と広告が歩み寄った時に、現代でも通用する動画広告、ブランデッドムービーが誕生するんじゃないかと思います。
 
山戸:映画も広告同様に新しい課題にぶつかっています。創作性と芸術性に加えて公共性も求められるようになったんですね。それぞれが抱えている信条と公共性がぶつかって、極端な二面性を持つブランデッドムービーが生まれていく。一人の作り手としてとしても、こんなにおもしろい部門はないなと思いますね。
 

 

■ブランデッドムービーで企業の人間性を伝える

 
柳沢:Webサイト上で公開しているブランデッドムービーは、視聴者自らがアクセスして観るものですから、一般的な動画広告よりも主体的に見てもらえますよね。であれば、ブランドに対する愛も伝えやすく、ブランデッドムービー市場は2020年以降のブランド愛の伝え方を考える場としても機能するのではないかと思います。ブランド愛を伝えるにはバランスが大事。ブランド愛がないコンテンツは、どんなにおもしろくても物足りない。でも、あまりにもブランド愛が強いと広告臭が出てしまって不自然になります。
 
高崎:インターネットを中心に情報源が増えて、テレビが以前ほど見られなくなった今、テレビCMは冒頭5秒で価値をストレートに伝えるようになりました。紆余曲折しながら語るのではなく、端的に伝える初速を求めるようになった。昔のCMだとサラリーマンが駅に向かってとことこ歩いているような情景描写もあったんですが、最近は言いたいことをすぐに言う。メディアと人の関係が変わったので悲観することではありませんが、あれだけ成熟していたCM文化が薄まったようにも感じます。CMが「私はこう思う」「この企業はこう思う」といったメッセージを内包しなくなり、企業の人間性が失われつつある。ブランデッドムービーは映画的なアプローチが許されている場でもあるし、好意的に見てくれる視聴者も多い場なので、いち作り手、いち発信者が何をやりたいか突き詰める場になると良いなあと思います。
 
諏訪:昔と今でCMの長さはさほど変わっていないのに、なぜ端的に伝えることを求められるのでしょうか?
 
高崎:CMが流れている間、テレビの前にじっと座っている人がいないんですよ。現代人は情報の取捨選択に慣れて、即座に「自分が体の中に入れるべき映像かどうか」を判断することができるようになったんです。なんだかよくわからない情報を見た時に「これは何を言っているの?」と味わう環境は、ほとんど存在しないのかもしれない。ただ、何事も逆張りというものがあって、みんながドラマ性を失っている今、逆にドラマ性に振り切ったコンテンツが目立つ可能性はあります。
 
長谷部:やっぱり感情にまっすぐ向き合った広告を作るのは難しいですよね。大前提は売り上げを伸ばすことですから、ゆっくり感情のひだを広げることよりも、商品を売る方向性に走りやすいと思うんですよ。でも、エモーショナルな描写ができているブランデッドムービーは、しっかり広告としても機能している。マスメディアで流れるCMだとかなかなか描きにくいストーリーもしっかり届けられますし、心が持っていかれるわけです。ブランデッドムービーは、緻密に作り上げた理念を広告の中に築き上げる稀有な存在で、そこがおもしろさだと感じます。
 
第二部「ナショナルカテゴリー」審査員トークはこちらから!
 


 
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