映画と広告のしあわせな未来をどうつくるか。BRANDED SHORTSセミナー「映画と広告の理想形」レポート

2018年10月、ショートショート フェスティバル & アジアは「BRANDED SHORTS 2018 秋の特別セミナー」として、電通エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター・高崎卓馬氏と、映画『告白』、『八日目の蝉』、『許されざる者』など数多くの日本アカデミー賞を受賞している映画プロデューサー・石田雄治氏のトークイベントを開催しました。本イベントでは、「映画と広告の理想形」と題し映画、広告双方の現在・未来と、映画×広告の化学反応がひきおこす可能性などについて語っていただきました。以下でその様子をレポートします。
 
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■ 映画から見たBRANDED SHORTS 、広告から見たBRANDED SHORTS

 
高崎:BRANDED SHORTSの定義そのものがまだ定まっていない気がします。受賞作をみてもその年ごとにカラーが全然違う。でもそれはものすごく可能性があるという意味でもあります。僕らのような広告の人間は映画に対してのリスペクトが強くて、だからこういうカテゴリーが豊かになることはとても歓迎です。映画とは違うものですが、やりたかったことがやれる土地にも見えています。ところで石田さんは広告をどう見られていますか?
 
石田:映像面では映画業界よりおもしろいチャレンジをしているので、先進的なイメージです。また、15秒という限られた時間でしか出来ない映像表現を作る楽しさも伝わってきます。映画は製作委員会の意向や劇場でヒットさせるために制作段階から宣伝まで、予算も含めていろいろ規制があります。特に最近は映画が中々ヒットしなくなってきたので、益々締め付けが厳しいのが現状です。広告業界は商品の宣伝を通じてどうやって人を楽しませるかを考えている人が多い印象を持っています。
 
高崎:使える尺が短く、ひとの意識をこちらにむける努力をしなくてはいけないので、たしかに実験的であることを許されている気がします。制約によって自由が生まれている部分もあります。予算の違いもありますね。
 
石田:今お話ししたように年々予算が無くなってきていますね。弁当ひとつとっても予算の違いは感じますね。広告仕事だと、映画仕事では出ないような焼肉弁当やうな重が出るので(笑)機材は妥協できないので広告業界同様にお金をかけようとしていますが、その分人件費や雑費が切り詰められていく面もあり、映画業界では「映画は安く作るもの」と割り切っている人が多いです。その代わり監督とかは他で、つまりCMでしっかりお金を稼いで収支バランスを保っているケースもあります。
 
高崎:僕も自主映画畑出身の人間なので、映画に対して猛烈な憧れがあります。その憧れがあるから広告以外の現場ではとくに多少の苦労は許容できてしまうところもあります。。
 
石田:そういう人は多いですよね。確かに昔は映画業界の求人が少なかったですね。僕の時代も大手はあまり募集していませんでした。でも今は映画業界に入りたがる若い人がどんどん減っています。ギャラ安いのに労働時間は多いし、ゲームやITに比べて将来性がない。もう映画業界は若者にとって3Kのひとつになっています。だから、現場は高齢化がひどくて…体力が持たず、撮影の合間に寝ている人もいるくらいです。これは由々しき問題だと思っています。なんか、映画業界のグチばかりになってますが(笑)。
 
高崎:広告も同じことが起きているかもしれません。テレビ自体を若い世代が見なくなっていますし、自宅にテレビがない後輩もいたりします。そういう環境の変化は作るものを少しづつ変えていくかもしれません。
 
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■ 環境の変化は、中身をどう変えるか

 
石田:最近テレビは皆録画してCMはスキップしているし、若者はテレビ自体見なくなっているから、どうやってCMを見てもらうかが難しいですね。
 
高崎:最近の傾向として、早め早めにこちらの言いたいことを直球で言うものが増えています。それも視聴環境の変化を作り手が考えてのことだと思いますが、どうも表現という意味では稚拙になっている気もしていて。直球のメッセージを繰り返す、みたいなことを映像化しているだけでは人の心を動かすことってできないと思うんです。
 
石田:商品名を覚えてもらうようにダジャレの商品連呼も多いですよね。
 
高崎:ん?これはなんのCMだろう?っていうゆっくりしたアプローチのものが届かなくなっているということかも知れません。
 
石田:その点、じっくり見せるBRANDED SHORTSは、CMではできない表現をしていますね。ドラマとして構成することで最後のオチを際立たせる手法が成り立っていて、映画に近いアプローチをしています。速い展開が多くなりがちなBRANDED SHORTSですが、シーンを限定することであえてゆっくりとした展開を取り入れることもできます。
 
高崎:作り手が「何のために作るか」「何を観客に届けたいのか」を強くイメージできている作品はやはり面白いです。商品や企業のことを言う前に、その映像のテーマのようなものをきちんと掴みにいっている、というのが大事な気がします。CMの場合は、商品をだせばどんなに荒唐無稽な展開をしていても着地してしまいますが、BRANDED SHORTSの場合はそれはちょっと許されない気がします。ストーリーとしての着地をしておかないと。そういう意味では映画やドラマに近いのかもしれません。視聴者のひとたちの期待がそういうところにあるという意味で。
 
石田:CMでは商品の見せ方も重要ですよね。
 
高崎:効果的に、感情のピークをそこにもっていくように設計します。言ってしまえばプロダクトプレイスメント100%なので、そこからどうエンターテイメントしていくかと考えるというか。強引にロゴを見せたり、商品と無関係な場所で遊んでも、広告として機能しません。そこから逃げずに「商品と人間の関係」をエンターテイメントにするようにするのが広告的なスキルと言えるかもしれません。
石田さんは映画とドラマとどちらも携わっていらっしゃいますが、そのふたつに違いはありますか?
 
石田:TVドラマは劇場映画と違い、不特定多数の人たちの“ながら見”を想定して作るので、自然とカット、効果音、音楽そして説明ゼリフを多くして非常にわかりやすく作ります。あと、表現規制もあります。映画はその作品をお金を出して劇場で観る人たちに向けて作っていますから、全て逆ですね。終わって劇場を出て、余韻に浸れてその作品について語れるようになればプロデューサーとしては幸せですね。
 
高崎:テレビの方がわかりやすく作りますよね、さみしいシーンだから「さみしい」と呟くとか。そのシーンを見逃してしまうと話がわからなくなる。わからなくなるとつまらなくなる。だからストレートに作って「誤解」や「解釈の余地」をあまり作らない。それはテレビという装置の特性だとは思います。
 
石田:デバイスの変化も気になっています。若い人が見るのは今やスマートフォンですが、僕はスマートフォンに特化した映像コンテンツを作った経験がないので、それが中心に映像を作ることになると対応出来るか、怖いですね。
 
高崎:子供たちに「なんでテレビを見ないの?」と聞いたら答えが思ったよりもシンプルで「おじさんばっかでてるから」と言われてハッとなりました。面白がるものが変わったのかと思っていたのですが単純に演者の新陳代謝のスピードがずれているだけなのか、と。
 
石田:あと、時間の変化も感じます。今は昔に比べて確実に見る体力はなくなっているじゃないですか。だから、最近「映画は2時間以内、できれば100分以内にまとめてくれ」と興業側から言われるんです。僕らが子どもの頃は3時間近くある映画もあったし、テレビでも普通に1年間の連続ドラマもありましたが、現在は世代に関わらず昔と環境が変わって生活のリズムが短くなっていると思います。だから長く見ることが難しくなっているのかなと。
 
高崎:ネットフリックスでも短いコンテンツに力をいれていると聞きます。スマホで観ることが普通になっているから、その短さが求められる適正な尺ということかもしれません。
 
石田:短いからこそできることもあるでしょうね。
 
高崎:一方で、本当に面白いものを作れば、そういう変化なんかふっとばせるということもあるかと思います。
 
石田:『カメラを止めるな!』はその代表例ですね。
 
高崎:劇場で日本人があんなに声を出して笑っているというのが衝撃的で。みんなで同じものをみて笑うあの一体感。一体感って幸福な感覚なんだなあと久しぶりに思いました。スマホでは味わえないタイプの感覚ですね。この感覚は僕たちは無くしてしまってはいけないなとも思いました。
 
石田:みんなで楽しむことは映画じゃないとできないじゃないですか。いっしょに手を叩いて笑う光景は、日本映画にはあまりみられないケースで、劇場一体型で楽しむ形は新しいアトラクションとして面白いですね。
 
高崎:昔インドで『インデペンデンス・デイ』を観たら、みんなすごい叫びながら観ていて、びっくりしたことがあります。
 
石田:インドは映画が娯楽の中心なので、それをみんなで見て楽しむ文化がありますね。アメリカなんかもそうですね。日本は映画館でのマナーに厳しいので、なかなか開放的には楽しめないですよ。映像を楽しむ文化もより豊かになっていくといいですね。
 
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■ 映画予告は画も字も主役になる

 
石田:映画予告ではストーリーよりも絵を重視しています。特にCM監督の作品はさすが映像が凝っているので、映画予告を作りやすいですね。テロップもうまく使って、だれが出ているかなど情報の順序も計算しています。内容を全部見せることはできないから、どこで切るかを考える。一分半バージョンは尺的に内容を見せていかないといけないんですが、劇場で見せるのは大体30秒バージョンなので、映画のジャンルと役者、監督、インパクトのある映像、印象的なセリフを入れたらそれだけで30秒になります。コピーで魅せる映画予告もあって、その場合はワイドショー的で人を引きつけやすい言葉と、フックのあるキャストを見せて構成します。そこはCM制作と同じですね。
 
高崎:観客の立場になると、何を見せてくれるのか、が最初にわかると引き込まれやすい気がします。石田さんが映画を企画するときの「選ぶ基準」のようなものは何ですか。
 
石田:ヒット漫画やベストセラーなどはもうメジャーな映画会社やTV局が原作権を抑えているので、そこには興味はないですね。どちらかというと昔の原作などでこれ実写化したら面白いだろうなと自分が思った作品を探しますね。そこからどの監督でどうゆうキャストでやれば実現出来るか考えるのが面白い。ベストセラーじゃなければより自由に出来ますしね。
 
高崎:小説や漫画を読む時も、映画化できるか考えているんですか?
 
石田:ふだんから映画の種を探してはいます。ただ最近小説は大衆受けする映画化前提の作品が増えてきましたね。僕は小説と映画は別物だと思っているので、作品の内容よりはそこに出ているキャラクターが魅力的で面白ければ、映画化する気が湧きますね。でも、最近はオリジナルに力を入れてます。原作読んでから映像化権を取得して脚本を作るという作業が年齢を重ねて大変になってきたので(笑)。監督といきなりこうゆう作品を作ろうって話して脚本作った方が楽だし楽しいかなと。最近は脚本も書ける監督が増えてますからね。
 
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■ クリエイターに新しいチャンスを与えるBRANDED SHORTS

 
高崎:BRANDED SHORTSはクライアントがいて、目的があるという意味でとても広告的なものだと思います。ただ、いわゆるCMとは視聴者の期待するものが違っているのでとても「エンターテイメント」なものになる。面白いものを見せてねと期待されているから、それに応えるために映画やドラマやMVや実験映像的な様々なアプローチを駆使する。映画とBRANDED SHORTSの違いは何でしょうか?
 
石田:もし、BRANDED SHORTSを劇場で上映するなら、数本集めてオムニバス形式にして、ある程度の上映時間にしないと難しいですよね。でも、オムニバス映画って、ジャンル的にヒットしづらいんです。だから興業として見せるのは無理ですね。劇場以外でどう人に見せるか、提供する場所を見つけることが重要だと思います。BRANDED SHORTSは長編映画では出来ない表現をいろいろチャレンジ出来るコンテンツだと思っています。もっといろんな人たちに見てもらいたいですね。特に映画やテレビドラマに飽きた人たちは(笑)。
 
高崎:映画にとっての映画館のように「いつもBRANDED SHORTSがある場所」が存在して、だれでも気軽に見られる環境があるといいですよね。面白い映像、世界の最先端の映像、がここにあるという場が。
 
石田:あと、BRANDED SHORTSが若い監督たちの才能を発掘する場になったらいいなと思います。さきほどお伝えしたとおり、映画業界に若い人が入ってこなくなっているので、BRANDED SHORTSを通じて参入障壁が低くなれば理想的ですよね。『カメラを止めるな!』の上田監督が短編作品を今度公開するんですが、全部おもしろいんです。それを観ると『カメラを止めるな!』が彼の集大成であることがよくわかります。彼はBRANDED SHORTSでも面白いものを作るんじゃないでしょうか。
 
高崎:新しい才能を開拓する場としても注目されているとその場所はとても熱くなります。クライアントもスタッフもこれをきっかけにステージがあがったりするといいですね。作品がブレイクするときはたいてい必ず複数の関係したひとがブレイクします。スターを生み出す場所として機能したら映画界、広告界としてもうれしい限りです。
 
石田:BRANDED SHORTS自体を長編化して劇場映画に転化することはビジネスとして成立すれば面白いと思います。BRANDED SHORTSを作る場さえ設けたら、表現の幅が広がるんじゃないでしょうか。監督に限らず、「映画は活動拠点だから思い切ったストーリーにはチャレンジできない」というクリエイター、役者さんが、BRANDED SHORTSで思い切ったチャレンジをしてくれたら楽しいですね。
 


 
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