「社会に欠かせないインフラ企業になる」サブスクモデルで多様なサービスを販売する企業の挑戦

株式会社ベネフィット・ワン 白石徳生

米国アカデミー賞公認短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は、2018年の創立20周年に合わせて、対談企画「Management Talk」を立ち上げました。映画祭代表の別所哲也が、様々な企業の経営者に、その経営理念やブランドについてお話を伺っていきます。
第32回のゲストは、株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長 白石徳生さんです。福利厚生アウトソーシングサービスで知られる同社の創業者である白石社長に、創業時から一貫して掲げているコンセプトや時代を先取りしたビジネスモデルについて詳しくお話しいただきました。
 
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株式会社ベネフィット・ワン

ベネフィット・ワンは、1996年に『サービスの流通創造』を目指し創業。レジャー、旅行、宿泊、スポーツなどのサービス提供側から送客手数料を徴収せず、利用者から会費をいただく「ユーザー課金型モデル」で、サービス提供側と利用者をWebを通じてマッチングさせる会員制優待サービス「ベネフィット・ステーション」※を提供。その他、人事・総務領域でのアウトソーシングサービスを幅広く展開。
※会員約781万人、10,770団体(2019年9月時点)
 
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「福利厚生ありき」ではなかった

 
別所はじめに、御社の事業についてお話しいただけますでしょうか。
 
白石ベネフィット・ワンをご存知の方のほとんどが、当社を福利厚生のアウトソーシング会社だとイメージされていると思います。けれども私たちは、最初から「福利厚生ありき」だったわけではありません。創業の段階から、インターネットでサービスを販売する会社を作る、というコンセプトを持っていたんです。
私たちが1996年に創業した時点で、「モノ」を販売する世界においては、スーパーやコンビニ、百貨店などで、消費者は、安心安全に様々なメーカーの商品を比較検討して買うことが可能でした。一方、「サービス」の場合、そのほとんどがサービスを提供している会社と販売している会社がイコールでした。つまり、流通がなかったわけです。そうすると、消費者は比較検討ができず、結果的に宣伝の上手な会社、あるいは、大勢の営業マンを抱えている会社がシェアを獲得していくことになります。私は、その状況をインターネットで変革したいと思ったんです。
 
別所たしかに。さまざまなメーカーのモノを販売する小売店は日本中に存在していましたが、サービスは同じ状況ではなかったですよね。
 
白石当時、サービスの流通が存在していたのは、旅行業界だけでした。旅行会社は、航空会社や鉄道会社、ホテルのサービスを販売していますよね。それと同じように、私たちは、教育や医療、美容といったあらゆる分野のサービスを、インターネットを通じて取り扱う会社を立ち上げようと考えたんです。ちょうど同じ時期に、楽天トラベルやエクスペディアも大企業の社内ベンチャーとして創業しています。ただ、私たちのビジネスモデルは他社とは大きく異なるものでした。流通の業界では、仕入れた値段と販売した値段の差額で利益を上げることが多いです。つまり、私たちが商品を買うときに支払う料金には通常、流通の手数料が含まれているわけです。けれども、ベネフィット・ワンは、仕入れ原価そのままを販売価格に設定しています。その代わりに、ユーザー様から月額400円程度の会費を払っていただくという仕組みにしたんです。
 
別所サブスクリプションですね。
 
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白石ええ。サブスクリプションモデルは、最近でこそ音楽や映画などのサービスで大流行しているので、皆さんにもとてもなじみのあるものだと思いますが、当社はこのビジネスモデルを1990年代にいち早く取り入れました。
サブスクリプションモデルは、会員獲得のための宣伝広告費が膨大にかかったり、決済の問題もあったりして困難が伴うビジネスモデルです。けれども、どうして、私たちが踏み切れたか? そこで福利厚生につながります。ベネフィット・ワンは、個人から会費を集めるのではなく、その個人が所属している企業からまとめて、福利厚生費として会費を集める戦略をとったんです。
 
別所企業と契約して、そこの社員の方々の人数分の会費を、ということですね。
 
白石ええ。税制上のメリットもあったため、歴史的に日本の大企業には、保養所をはじめ人間ドックや英会話学校といった様々なサービスを福利厚生として社員に格安で提供するという制度がありました。けれども、自社で保養所という名のホテルを作って維持するのは大きなコストがかかるわけです。だから、私たちは、保養所に代わり得るものとして、世の中にあるホテルを原価で会員に提供し、その対価として会費をいただくという商品を仕立てました。つまり、福利厚生のアウトソーシングです。すると、その2年後に金融危機が起こり、当時の都市銀行に公的資金が注入されたときに、銀行は自社の保養所を手放す動きが広がりました。そこで、ベネフィット・ワンが福利厚生のアウトソーシングを提案することで、大企業が保養所を閉鎖してベネフィット・ワンのサービスに切り替える動きが増えていきました。私たちの最初のお客様は銀行だったんです。
 
別所時代の流れにも乗っていたわけですね。
 
白石ええ。ただ、最初に申し上げた通り、もともと福利厚生ありきではなく、先にあったのは、サブスクリプションで個人から会費を集めて、会員がインターネットを通じて格安でサービスを購入できるようにするビジネスモデルです。一方で24年前はインターネットの通信速度が遅く、私たちは分厚い紙カタログを使っていたので、世間からはインターネットの会社だとは思われなかったのですが(笑)。私たちの真の姿は創業以来、インターネットを活用して「サービスの流通創造」を実現する会社なんです。
 
別所そういうことだったんですね。
 

ヘルスケア事業も急成長

 
白石サブスクリプションモデルというのは、一番多く会員を獲得できた会社が一番サービスを安く提供できるため、最終的には一社総取りのモデルです。いま、私たちの会員数は約800万人にまで達しています。さらに、空前の人手不足によって、中小企業のなかでも福利厚生に取り組みはじめる企業も増えてきていますから、ますますの伸びが期待されます。
 
別所サブスクリプションモデルでいけるなと思ったのはいつ頃でしょうか?
 
白石数年前までは、真似されるのを避けるためにあえてサブスクリプションモデルの話はしてこなかったんです。けれど、数年前に、もう大丈夫だなと自信を持って、このビジネスモデルをPRするようになった結果、会社の時価総額も初めて上場したときの約30倍の規模になりました。
 
別所素晴らしい。
 
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白石あとは、最近、福利厚生事業以外で当社のなかで急成長しているのが、ヘルスケア事業です。日本では、法律によって、40歳以上の従業員に、メタボリックシンドロームの予防を目的に、特定健診を受けてもらう必要があります。
そして、メタボリックシンドロームと認定された社員がいた場合、保健指導を受けてもらうことが義務づけられています。いま、40歳以上の日本人では、男性のおよそ4人に1人が予備群であると言われています。そういった方々がダイエットプログラムを受け、健康な体を取り戻せば、結果的に医療費が大幅に削減できることになるでしょう。医療費がこのまま増えていくと、国家財政は破綻してしまいます。そのなかで、人口問題の影響が大きい年金とは違って、医療費は、やり方によっては大きく削減できる可能性があります。だから、政府はより力を入れているんです。
 
別所ええ。
 
白石それで、国策として医療費を削減するために、企業に従業員の健康管理をさせる法律や制度をどんどん作っています。たとえば、最近では、データヘルス計画といって、健診データをすべて保管するよう企業に求めています。そのビッグデータを集めれば、どういう行動をすると、どういう病気になっていくらコストがかかる、ということがわかってくるわけです。あるいは、健康ポイント。健康づくりのための運動や食事など、体に良いことをすると、会社からポイントがもらえるという仕組みです。そして、貯まったポイントは、健康関連食品等と交換することができるという。これは、おそらく近々義務化されるでしょう。そういった制度が義務化されるたびに、会社はその取り組みをはじめますから。ベネフィット・ワンでは、健診予約代行や保健指導、データ管理、健康ポイントのサービスも手掛けています。今後はきっと、オンラインカウンセリングも義務化されると思います。心と体の健康を維持できれば、数年後の医療費は大きく下がるはずです。健康はこれから間違いなく主要産業になっていくと思います。
 

社会に欠かせないインフラ企業に

 
別所さまざまな事業を展開するなかで、ブランディングについてもお伺いしたいと思います。僕が主宰するショートショートフィルムフェスティバル & アジアでは、BRANDED SHORTSという部門で、企業のブランディング・ムービーを特集しています。白石社長は、御社のブランディングについてどのようにお考えですか?
 
白石当社にとって追い風が吹いている今こそ、本気で会社としてのブランディングを考えようとしています。実は数ヶ月前にプロジェクトチームを立ち上げたところです。若手が中心となって、まさにいま色々と議論しているところです。
 
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別所ぜひショートフィルムでのブランディングもご検討ください(笑)。それでは最後に、御社の今後の展望についてお伺いできますでしょうか。
 
白石私たちが目指している将来像は、社会に欠かせないインフラのような企業になることです。おそらく数年もすれば、ほとんどの日本人が、レストランも教育も医療も美容もスマホで予約をすることになるでしょう。そのときに、ベネフィット・ワンの会員になっていただき、月会費を払うことで格安でサービスを購入できるようにするのか、あるいは、都度、流通に手数料を払うのか。その答えは、その人が、年間いくらサービスを購入するかによって損益分岐点が出せてしまうんです。流通の手数料を10%として、ベネフィット・ステーションの会費は年間約5千円で設定していますから、もし年間5万円以上サービスを買うのであれば入会した方が得ということになります。日本人のサービスへの平均支出は年間約120万円程度と考えると、私たちは平均して、約12万円分の流通費用を払っているわけですが、ベネフィット・ワンですべてを完結できれば、ずっと安く済むわけです。
 
別所たしかにそうですね。
 
白石だからまずは、定額の会費をお支払いいただくことでさまざまなサービスを原価で購入できる世界を作り、広げていくことが最初のステージです。
そして、その次にやりたいのは、消費者の声や評価といった記録の活用です。消費者が毎回点数をつけることで、サービスのクオリティは上がります。ホテルでもレストランでも病院でも、サービスの提供側が、より良い評価をもらうために切磋琢磨するからです。そのなかで、記録の取り方は大きく二つあると考えています。一つは、ミシュランのように、プロの目利きが点数をつけていくという方法。そして、もう一つは口コミです。その両方をサイト上で公開していく仕組みを作るのが次の目標だと思っています。それを実現するために、私たちが目指しているのは、会員数3000万人という規模です。日本で働いている人の約二人に一人という圧倒的なシェアを短期間で獲得できれば、その先さまざまな可能性が大きく広がっていくと考えています。
 
別所ありがとうございました。

(2020.1.15)

 


 

株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長 白石徳生

 
近影1989年に拓殖大学政経学部を卒業後、1996 年パソナグループの社内ベンチャー第1号として株式会社ビジネス・コープ(現 株式会社ベネフィット・ワン)を設立、取締役に就任。2000年同社代表取締役社長に就任。JASDAQ、東証二部を経て2018年に東証一部 上場を果たす。「サービスの流通創造」を経営ビジョンに、ユーザー課金型の会員制優待サービス「ベネフィット・ステーション」を運営。また、福利厚生・健康・ポイントを中核とした BPO 事業のワンストップソリューションを提供することで、 昨今の人手不足を背景とした働き方改革、健康経営、生産性向上などの企業の経営課題を多角的に解決している 。