【Branded Shorts 2018 Shortlisted】『母の辛抱と、幸せと。』(日本)

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【Branded Shorts 2018 Shortlisted】『母の辛抱と、幸せと。』(4:46/日本/2017)
 
広告主:マツ六株式会社
広告会社:株式会社電通
制作会社:株式会社シースリーフィルム
作画:鉄拳
 
【あらすじ】
「辛抱」を家訓とし、息子に弱さを見せない強がりな母親と、母親の転倒を機に親孝行に奔走する息子の思いが描かれた作品。 大切な人を転倒から守りたいという想いと、高齢者の転倒予防、健康寿命の延伸を啓蒙するための企業広告としてWeb動画を制作。

前半は息子が誕生してから懸命に育児に励む母親の描写。辛くても耐えて頑張るということを息子に言い聞かせる母親の信条は「辛抱」。 息子は故郷を離れ進学し、都会で就職。 月日が流れ、母親は体が辛くて電球も替えられず、階段も壁に手をあてながら降りるのがやっと。 一人で寂しい気持ちがありつつも、息子が心配せぬよう、敢えて連絡をせず辛抱を続ける。 しかし… 階段から転落した知らせを聞いた息子は祈る思いで急遽帰郷。 大事には至らなかったものの、実家で目の当たりにしたのは、荒れ果てた光景。 その後、息子は母親のために介護の準備をし、親孝行に励む。 懸命の介護により、母親は心豊かな暮らしを取り戻していく。 最期の鼓動を感じながら老いた母親の手を握る息子。 涙する息子の顔が徐々に霞んでいく。 母親は「幸」とともに人生を全うする。
 
【コンテクストの説明】
現代の経済の一極集中といった就労状況では、親子の関係性が犠牲となり希薄化が危惧されていますが、仏説である『父母恩重経』(ぶもおんじゅきょう)には、子へ注ぐ愛情・親心の深さといった真の愛情が説かれています。生子忘憂の恩(出産後の泣き声に、自分もはじめて生まれてきたような喜び)。廻乾就湿の恩(子を乾いた所に寝かせ、親は湿ったところに寝る)。嚥苦吐甘の恩(親は不味いものを食べ、美味しいものは子に食べさせる)。遠行憶念の恩(子が遠くへ行ったら、帰ってくるまで四六時中心配する)といった十種の恩における母と息子という非常に普遍的なメッセージを、大塚愛さんの音楽と鉄拳さんのアニメーションで紡ぐ作品としました。産めば始まり・巣立っても我が子という終わりが分かりにくい育児。対して介護の始まりは分かりにくく、いつの間にか無理が祟って親が転倒してしまう。「親が年をとる」ことは、誰もが年齢を重ねて初めて経験します。子は親元を離れて都会で働き、親も子をできるだけ頼ろうとせず、疎遠になりがちな日本社会で、「親子の絆」や「感謝」といったことをテーマに据え、健康に生きるということ、そのために今何ができるかということを考える機会を多くの人に提供しています。
 
【制作の目的】
介護と言えば、グループホームなどの施設介護を想起しますが、施設数は極めて少なく「待機老人」増加の問題があります。全国で90%以上の居宅介護において、軽度者のケアを怠れば重度化が急激に進み、家族の介護が必要となり離職による労働人口の減少・収入の減少など負のスパイラルが発生します。団塊世代の後期高齢化が急速に進み、国立社会保障・人口問題研究所の予測では、65歳以上の高齢者の割合は2024年に30%を超えます。交通事故より住宅内での転倒や溺死による死亡者数が上回るような状況にもあります。介護や福祉の保障重視の議論は、介護が必要になってからの内容が多いですが、介護が必要となる前の段階で、特に住宅で高齢者を転倒させず安心して自立した生活ができる住環境を整えることが超高齢社会における課題であり、日本だけでなく、高齢化が進むアジア諸国の課題となりつつあります。介護保険給付費が著しく増加している中、少額でありながら自宅内で骨折・転倒予防に繋がる介護リフォームが果たす社会的役割の価値は高く、転倒⇒骨折⇒入院⇒寝たきりとならないように、早い段階で手すりを設置することで転倒を防止し、健康寿命をのばすといった社会的大義のあるコミュニケーションを目指しました。
 
【応募作品を通して伝えようとしたメッセージ】
母親と息子の人生を題材にすることで、「親子の絆」や「感謝」を想起させる作品とし、さらに手すりを主業とする企業として、健康寿命の延伸への貢献、転倒予防の啓蒙をコアメッセージとしました。ストーリーには、市区町村の福祉担当者やケアマネジャー、施工業者も登場します。独居高齢者、介護離職などのさまざまな課題がある中、1人で辛抱しなくても安心して相談できる福祉の仕組みやリフォームで解決できる手段があるというメッセージも込め、新たな社会的コンセンサスづくりを目指しました。 2018年3月時点での動画再生回数は、YouTubeで約60万回、SNSで300万回を突破。合わせて600件以上ものコメントが寄せられました。 「大人になって忘れていた、大切なものを思い起こさせてくれる作品でした。」 「母のところへ行ってみようかな」 「親孝行するために、僕は介護の仕事に就こうと思います。」 「親にあと何回会える?そんなこと思い知らされる動画だな・・・」 「親の介護とか絶対したくないって思っていたけど、その気持ちが薄らいだ。」 「辛い、辛い…と思わずに、一つ足して幸せでいられるように毎日“一“を足していきます。」 等々
 
【クリエイティブにおける工夫とその意図】
人は15分したらその記憶の9割を忘れると言われています。忘れないのは刷り込まれた記憶、事前に心構えしていた内容、そして感動したこと。だからこそ「感動」を伝える作品を作ろうと思い、ストーリーは社内で考えました。短い尺で、登場人物の年齢の変化や、階段からの転落を描くにはアニメーションが最適という考えのもと、パラパラ漫画でも著名な鉄拳さん(吉本興業)を起用。楽曲は大塚愛さんの「日々、生きていれば」をタイアップソングとして起用し、作品全体を柔らかく透き通った歌声で包んでいます。 幼少期と高齢期を反転・対話させることで「介護」に対する社会的な気づきをメッセージとして与えています。介護とは育児でしてもらったことを、そのままお返しすることである。大変さは違うかもしれませんが、育児も介護も子を思う気持ち、親を思う気持ちは同じ。最後のシーンで「辛抱」の文字が「辛」だけとなり、「辛」に一本の手すりを加えると「幸」になる。親には辛抱してもらった分、幸せになってもらいたい想いを作品に込めています。 大切なあなたがうっかり転ばぬように 元気で笑顔いっぱいの毎日でありますように