【Management Talk】「新しい取り組みができる器の大きい会社に」和歌山県・白浜でアドベンチャーワールドを運営する会社が大切にする3つの「Smile」

米国アカデミー賞公認短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は、2018年の創立20周年に合わせて、対談企画「Management Talk」を立ち上げました。映画祭代表の別所哲也が、様々な企業の経営者に、その経営理念やブランドについてお話を伺っていきます。
第39回のゲストは、株式会社アワーズ代表取締役社長の山本雅史さんです。同社が運営する和歌山県白浜にあるアドベンチャーワールドは、ジャイアントパンダをはじめ、陸、海、空の140種、1400頭の動物が暮らすテーマパークです。「Smile」をキーワードにパーパス(理念)経営を展開する山本社長に、動物たちや社員のみなさん、そして、社会への思いについてじっくり語っていただきました。
 
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株式会社アワーズ
株式会社アワーズは「こころでときを創るSmileカンパニー」という企業理念のもと、子どもたちにより良い社会を贈り継ぐために、未来のSmile(しあわせ)を創造し続けることをビジョンとし、関わるすべての人々のSmileを創造し、笑顔溢れる明るい社会を実現するために企業活動を続けています。和歌山県白浜町に位置する動物園、水族館、遊園地を併せ持つテーマパーク「アドベンチャーワールド」を運営しています。
 

「社員のSmile」「ゲストのSmile」「社会のSmile」

 
別所本日はよろしくお願いします。はじめに、株式会社アワーズさんが展開している事業についてお話しいただけますでしょうか。
 
山本よろしくお願いします。私たちアワーズは、和歌山県にある白浜というリゾート地で「アドベンチャーワールド」を運営している会社です。アドベンチャーワールドは、動物園や水族館、遊園地、サファリパークのある日本でも数少ない複合型のテーマパークです。今年で創業45年目を迎えておりまして、動物たち、そして、約350名の社員のみなさんと一緒に、お客様のSmile(しあわせ)を作っていく事業を展開しています。
 
別所素敵ですね。約半世紀の歴史があるわけですが、アドベンチャーワールドの成り立ちについて教えてください。
 
山本実は、開園当初は、私たちが運営していたわけではありませんでした。私の祖父が、もともと建設業をはじめて一部上場企業にまで育て上げたのですが、その会社が、アドベンチャーワールドの建築を受注したというのが最初の関わりです。つまり、はじめは建物や設備を作る側だったんですね。ところが、そのオーナー様が、一年ほどで事業を継続していくのが困難になったということで、当社が引き継いだわけです。それが43年ほど前のこと。そこから、私たちのグループで運営させていただいております。私自身は、7年前に父から社長を引き継ぎました。
 
別所山本さんは1977年生まれですから、山本さんが生まれてから数年後にお祖父様がアドベンチャーワールドの運営をはじめたわけですね。そして、時を経て、山本さんが事業を引き継いだ後、コロナ禍となり、随分状況も変わったと思うんですけど、そのあたりについてはいかがですか?
 
山本まず、私たちの事業については、多くの方に「夢のある仕事ですね」と言っていただけることが多いですし、実際にその通りだと思います。これほどまでにたくさんの方から「ありがとう」と感謝の言葉を直接かけていただける仕事は、なかなかないでしょう。コロナ禍においても、それを強く実感した出来事がありました。アドベンチャーワールドは、コロナ禍によって、約2ヶ月間、臨時休園を余儀なくされた時期があったんです。ただ、休園と言っても、パークの動物たちにはいつもと変わらない生活をしてもらうため、飼育スタッフたちは出勤する必要があります。つまり、会社としての収入が途絶えた期間も、経営としては、固定費の支出が続くことになるわけですね。
 
別所非常に厳しい状況ですよね。
 
山本ええ。そのときに、動物たちの食事の費用のために、クラウドファンディングを実施させていただいたんです。すると、当初500万円を目標にしていましたが、結果的に7,000万円を超える支援と、3,000件を超える温かいメッセージを頂戴することができました。そこで、私たちは、本当にたくさんの方々に支えられながら事業を行っているんだということを強く実感しました。
 
別所目標の 10倍以上の金額と応援が集まったわけですね。すごい。
 
山本本当にありがたかったです。そして、やはり、この二年半、苦しいながらもなんとか苦境を乗り越えてこられたのは、社員のみなさんの頑張りのおかげだと非常に感謝しています。私は、当社の強みは、人、つまり社員であると自負しているんです。そして、私は経営者として、社員のみなさまには自己実現の場としてアワーズを舞台に活躍いただけるように日々意識しています。
 
別所素晴らしい。
 
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山本アワーズは、「社員のSmile」「ゲストのSmile」「社会のSmile」という3つのSmileを大切にしています。いわゆる「三方よし」ではあるのですが、私たちの場合は順番も大事にしています。まず、「社員のSmile」が第一で、私たちが幸せであり、成長することが最初にあって、それによって、お客様の幸せを大きくしていくことができて、そうすることで、社会全体が幸せになっていく、という考え方です。私は、この6年間、会社の仕組みづくりも含めて、社員のSmileにフォーカスしてきたつもりです。その結果、社員のみなさんがすごく成長してくれたと実感しているんです。
 
別所アワーズさんはSmile、笑顔という言葉を非常に大切にされていますよね。「こころでときを創るSmileカンパニー」という企業理念もそうですし、一年半ほど前に山本さんが上梓された書籍のタイトルも「だれもがキラボシ 笑顔あふれるテーマパークの秘密」でした。
 
山本ありがとうございます。私は、社長に就任する直前まで、生きる目的なんて考えたことがなかったんです。単純に、人に勝ちたいとか、人に承認されたい、と思っていたくらいで。けれども、当たり前ですけど、自分がなにかで勝ったときには当然周りに負ける人が出てきます。そして、それが重なっていくと、人間関係がどんどん崩れていって、周りから仲間がいなくなってしまうんですよね。実際、社長になる前の私は、社内でもそういう状況でした。
 
別所ええ。
 
山本そうやって生きてきましたが、父の跡を継ぐことになったのをきっかけに、自分なりにどんな経営手法がいいのかを真剣に考えたんです。そこで巡り合ったのが、パーパス(理念)経営でした。自分が受講したある研修で、講師の方から、「あなたの人生理念はなんですか?」という問いを受けたんです。つまり、生きる目的ってなんですか? と。
 
別所会社のパーパス以前に、個人としての人生のパーパスを。
 
山本そうなんです。私はそれまでそんなこと考えたこともありませんでした。そして、そこで初めて真剣に考えた結果、これまでのような、自分が勝つことで周りに負ける人が出てくる人生って嫌だなと気づいたんです。人に承認されるために生きるのも嫌だなと思いました。自分は、誰かに勝つために生きるのではなくて、自分に関わる人が幸せに、笑顔になってもらうために生きたい。誰かに承認されるために生きるのではなくて、自分自身を承認できる人生を送りたい。そういう人生だったら、自分は幸せを感じられるし、笑顔で生きられるなと思ったんです。そこで、私の生きる目的が明確になりました。そして、会社としても「Smile」を大切にしていこうと決めたわけです。それからは、自分と同じように、社員のみなさんにも自分自身の理念や会社の理念について考えていただきたくて、社内でもそういう研修をたくさん行っています。
 

他社とのコラボレーションによって生まれる広がり

 
別所なるほど。そのなかで、社員のみなさんのパーパスと会社のパーパスが重なれば、より仲間として一致団結していけますもんね。そして、パーパスはブランディングにもつながります。
 
山本そうですね。まずは、私たちアワーズのことを知っていただいて、そのアワーズが作っている価値がアドベンチャーワールドだという流れで、ホームページにも企業パンフレットにも、私たちの思いや大切にしていること、そこから具現化したアクションなどを掲載し、外向きに発信しています。その結果、実際に仲間が集まり広がるようになってきています。そういう思いを持っているんだったら、一緒にやりたい、と。
 
別所具体的にはどんな展開が生まれているのでしょうか?
 
山本アワーズは2020年に企業理念に基づき、SDGsが目指す「Well-Being」を追及し、Smile溢れる明るい豊かな社会を実現するために、SDGs宣言を行いました。活動の一環として、パークに暮らすジャイアントパンダの食べ残した竹幹を活用するために、「竹あかり」を全国で展開する「CHIKAKEN〈ちかけん〉」さんとコラボレーションし、パーク内で灯しました。現在では、パーク内だけではなく、白浜町の宿泊施設などにもお声がけいただき、地域に灯りの輪が広がっています。2021年には関わるすべての方にSmile(しあわせ)が溢れるまちを目指して白浜町と「サスティナブルSmile連携協定」を締結しました。さらに、竹を利用した循環型社会を目指すために、大阪府岸和田市とSDGsパートナーシップ協定を結び、生物多様性の保全や循環型社会の形成、住み続けられる街づくりに取り組んでいます。
そして、アドベンチャーワールド40周年記念の際に、JR西日本さんとコラボレーションして、特急「くろしお」号にアドベンチャーワールドのシーンをラッピングした「パンダくろしお『Smileアドベンチャートレイン』」を運行しました。しかも、それで終わりではなく、続いてタカラトミーさんからお声がけいただきまして、パンダくろしお『Smileアドベンチャートレイン』をプラレールにすることになりました。さらに、そこから、マクドナルドさんに、ハッピーセットのおもちゃにしましょうというお話までいただいて……次々と広がっていったんです。
 
別所すごいですね。
 
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山本そういった他社様との取り組みは本当に増えてきています。それまでは、自分たちで全部やらなければいけないという思い込みを持っていたんですが、いまでは、地域や外部企業のみなさまと協力することで、より多くのことができるとわかってきました。その方が広がりも大きいです。
 
別所本当に、根本の理念の部分で共感ができるとよいパートナーになることができますよね。僕たちは、映画、映像の分野で、企業の理念、パーパスをストーリーテリングするブランデッドムービーの製作も行っているんですけど、動画を使ったコミュニケーションについて、山本さんはどのようにお考えでしょうか?
 
山本非常に重要なことだと思います。どうしても文字だけでは伝えきれないものはありますよね。それが、まさにいま私たちが直面している課題でもあります。アドベンチャーワールドに来園したことがない方に、アドベンチャーワールドの魅力を伝えるのはすごく難しいです。冒頭でお話ししたとおり、日本では他にない複合施設なので、お伝えしようとすると、たとえば、動物園と水族館と遊園地が一体となった施設ですよ、といったような説明しかできないんです。だけど、それだと全然伝わらないでしょう。どんなことを大切にしていて、それをどう具現化している施設なのかということをしっかりと映像でお届けするというのは、今後必要になってくることだと考えています。
 
別所ぜひ僕たちとなにかご一緒できることがあったらいいですね。僕たちは企業さんの理念をストーリーとして映像で伝えるブランデッドムービーをたくさん作っているので、お手伝いできることがあるかもしれません。
 
山本ぜひ作ってみたいですね。映像を作る過程でも、私たち自身がアワーズの理念を深掘りすることができるような気がします。いま、インナーブランディングとして、社内の映像製作チームで短い映像を作ったりもしているのですが、プロフェッショナルの方々のお力を借りることも大事だなとひしひしと感じているところでした。
 
別所ぜひやりましょう。企業さんがそのストーリーを動画で発信したいという需要は年々高まっています。そして、きっとこれからますます盛り上がるでしょう。実際、企業さんのPR、HR、IRの情報発信がどんどん動画コミュニケーション化しています。アドベンチャーワールドにもたくさんのストーリーが眠っていると思いますので、ぜひ、それを動画で発信していきたいですね。来園されるお客さんのストーリーもそうですし、動物たちや社員のみなさんが持っている魅力的な物語もあるでしょうし。
 
山本いいですね。実は、コロナ禍でやりたかったことはそれに近いことでした。当社の社員約350名一人一人のショートムービーを作りたいね、と話していたんです。その前には、社員一人一人のキャラクターをプロのイラストレーターに描いてもらうという試みも行っていましたが、今後、社員のみなさん一人一人にフォーカスして、それぞれが活躍しているシーン、輝いているシーンを収めた動画を作れたら最高ですね。
 

社会にどれだけの価値を提供できるか

 
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別所まさにそれはショートフィルムです。ぜひ改めてご相談させてください(笑)。では、これからの未来に向けては、山本社長はいまどんな景色をご覧になっておられますか?
 
山本コロナ禍で「不要不急」という言葉が注目を集めたように、いまの時代、私たちの事業は、社会から存在価値を問われている状況にあり、そのことはしっかりと向き合っていかなければならない局面です。さらに、私たちは、動物園や遊園地としてというだけではなくて、アワーズ全体としても、10年後20年後、社会に必要とされる存在であるために、社会にどれだけの価値を提供できるかを示していかなければいけないと自覚しています。そのためには、いまの事業領域にとらわれず、私も含め全社員が一丸となって、企業理念やSDGsの達成に向かって、新しい取り組みができる器の大きい会社を目指していきたいです。かりに、動物に関わらない事業であったとしても、理念に沿ってさえいれば、ためらわずにやるべきで、そこからたくさんの価値が生まれて、社会に必要とされる企業になっていきたいです。
 
別所これからの企業経営においては、分野に限らず、ソーシャルグッドであることが問われますし、山本さんご自身がおっしゃるとおり、SDGsというキーワードで価値を生み出し、社会とつながっていくことが重要だと思います。最後に、デジタルへの取り組みについてはいかがでしょう? DXやメタバースといった分野と御社の事業は親和性が高いのではないかと感じます。
 
山本個人的にも大好きな分野ですので、取り組みはじめているところです。コロナ禍において、ご来園いただけない方にどのような価値をお届けできるかを考えるなかで、2年ほど前には、YouTubeの24時間連続オンラインライブ配信にチャレンジしました。そのときは、全社員で30企画ほど準備し、結果的に同時接続で3,000人以上の方に観ていただけました。現在ではアドベンチャーワールドの公式YouTubeチャンネルの登録者数は17万人を超えており、ご来園いただけない方にもお届けできる価値があるんだと気づくきっかけにもなりました。そして、今後は、メタバースにも取り組んでいけたらいいなと考えているところではあります。
 
別所いいですね。
 
山本また、いままさに開発しようとしているのが、アドベンチャーワールドだけでなく、日本中の動物園、水族館が一つのプラットフォーム上でつながれる仕組みです。コロナ禍においては、全国のさまざまな動物園や水族館がYouTubeやSNSで情報発信をしてこられました。けれども、マネタイズができていないんですよね。その部分で、価値を価値としてきちんと届けられるような仕組みだったり、オンライン上のコンテンツとリアルなコンテンツがうまく接続するような仕組みを、私たちが作り上げてご提供できないかなと考えているところです。まだまだ時間はかかるでしょうけど、実現を目指して取り組んでいきたいです。
 
別所期待しています。そして、実は僕の両親の新婚旅行先が南紀白浜だったので、僕自身も個人的に家族でぜひ行きたいなと思っています(笑)。
 
山本ぜひお越しください。
 

(2022.6.27)

 


 
山本雅史プロフィール写真(タテ上半身)
山本雅史(株式会社アワーズ代表取締役社長)
ジャイアントパンダをはじめとする、140種1,400頭の動物が暮らすテーマパーク「和歌山 アドベンチャーワールド」を運営する企業、株式会社アワーズの3代目経営者。
2015年に経営を引き継ぎ、「こころでときを創るSmileカンパニー」という企業理念をもとに、人を大切にする「理念経営」を実践。
理念浸透の一環として手掛けた新社屋が、第31回日経ニューオフィス賞にて「近畿ニューオフィス推進賞」を受賞した。
 
 
 
 
 
 
 


 
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